K-POPの世界的ヒットの裏には、北欧プロデューサーの存在がある

K-POPの世界的ヒットの裏には、北欧プロデューサーの存在がある

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後藤美波(CINRA.NET編集部)
イラスト:アボット奥谷 編集:川浦慧

欧米と韓国のプロデューサーが協業し、化学反応を起こすことで独自のサウンドが生まれる

こうした「協業」による作曲を可能にする仕組みの1つが、世界中のプロデューサーが集まってコラボレーションする「ソングキャンプ」だ。SMエンターテインメント(韓国の大手芸能事務所・レコード会社)は2010年前後から欧米にネットワークを広げており、2010年にストックホルムで開催したソングキャンプでは、参加した全ての作曲家がSMエンターテインメントのアーティストのためだけに4日間にわたって曲作りをしたという。BoAの“Hurricane Venus”(2010年)やEXOの“Wolf”(2013年)はこのようなソングキャンプから生まれた。

BoA“Hurricane Venus”

S.E.S.(SMエンターテインメントの初期の代表的なガールズグループ)が1998年にフィンランドのガールズユニットNylon Beat(フィンランドの音楽ユニット)の楽曲“Like A Fool”をカバーした“Dreams Come True”を発表していることから、同社は当時から北欧のサウンドに目を向けていたのだろう。

Nylon Beat “Like A Fool”を聴く(Apple Musicはこちら

S.E.S. “Dreams Come True”

アンネ・ジュディス・ウィックはソングキャンプで曲作りをすることの利点を「趣向や背景が全く異なる作曲家が一緒に作業することで、魔法のような斬新な曲が生まれる」と、かつてインタビューで話している(「Kstyle」2014年10月31日インタビュー記事より)。1曲の中に複数のジャンルが入れ替わり立ち替わり現れる、大胆な曲の展開はK-POPの特徴の1つだ。

欧米のプロデューサーの持つグローバルなポップソングの感覚と韓国人の好みを把握している自国のプロデューサーが協業し、化学反応を起こすことで、独自の「K-POPサウンド」が作り出されているのかもしれない。

またCaesar & Louiは、Red Velvetの“Red Flavor”がもともとはイギリスの人気ガールズグループLittle Mixに提供することを想定して作っていたことを明かしているが(「TONE GLOW」2017年8月8日インタビュー記事にて)、それが様々な工程を経てRed Velvetのヒット曲になったというエピソードも、K-POPと欧米のプロデューサーの繋がりを象徴している。

良質なポップミュージックを輸出し続けるスウェーデンをはじめ、北欧の音楽家の手腕に注目

スウェーデンに限って言えば、世界有数のポップミュージックの輸出国として知られる。ビルボードチャート上位の半数近い楽曲の背後にスウェーデンのプロデューサーがいることも珍しくはない。Backstreet Boysやブリトニー・スピアーズ、セリーヌ・ディオン、ピンク、Bon Jovi、テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデなどを手掛けたマックス・マーティンもスウェーデン出身。彼は『グラミー賞』受賞歴もある。2013年にはスウェーデンがアメリカ、イギリスに次ぐ第3位の音楽輸出国になったとの報道もあった。

振り返れば古くはABBAにはじまり、スウェディッシュポップの代表格The Cardigans、1990年代から第一線で活動するRobyn、さらにはAviciiやSwedish House MafiaといったEDM勢まで、ジャンルは違えど「ポップミュージック」のフィールドの中でスウェーデンのミュージシャンたちは良質な音楽を生み出し続けてきた。ポップ大国である北欧の国々で活動する音楽家たちの手腕は、K-POPが世界の中の「独自のポップミュージック」へと進化していく過程においても大きな役割を果たしていたのだ。

あなたが何気なく聴いていた曲の背後にも実は北欧のプロデューサーがいるかもしれない。彼らの多くは普段あまり表に出ることのない職人のような存在だが、そんな北欧の隠れたポップ職人に注目して聴いてみるのも、1つの音楽の楽しみ方ではないだろうか。

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