LGBT先進国、スウェーデン。同性愛の冷やかしを乗り越える少女たちの恋愛物語『ショー・ミー・ラヴ』

またまた、ルーカス・ムーディソンです。これまでご紹介した三作品は、首都ストックホルムに生きる都会の若者たちの物語でしたが、今度は田舎町のオーモール(Åmål)が舞台です。邦題の『ショー・ミー・ラヴ』は英題そのままですが、原題は『Fucking Åmål』。田舎町で鬱屈とした毎日を送る少女たちの恋と青春を描いたムーディソン監督の長編デビュー作です。

毎日が同じことの繰り返しで、ここではないどこかを夢見る少女たち。いつの時代もどこの国でも描かれている物語だけど、少し違うのは、都会から引っ越してきた16歳の少女アグネスが恋心を抱いているのが、2つ年下の女の子エレンだということ。正反対の性格の二人はやがて急速に近づくけれど……。

北欧諸国はLGBT先進国でもあり、デンマークとノルウェーに続いて、スウェーデンでは1995年に同性パートナーシップ法が制定されています。また、ゲイフレンドリーな国ランキング(ドイツの国際的なゲイ専門旅行ガイドが定めたもの)で1位に輝いたこともあり、現在は多くの場所で男女共用トイレが整備されているほど。しかしながら、どんなに国の政策が進んでいたとしても、舞台である1998年のオーモールでは、レズビアンであることはスキャンダラスに捉えられ、冷やかしの対象であったようです。でも、アグネスとお互いの気持ちを確かめ合ったエレンは高らかに宣言します。「私の新しいガールフレンドよ。道をあけて。通りたいの」。思い出すだけで、胸と目頭が熱くなるセリフです。

ムーディソン監督は、10代の女の子たちの複雑で繊細な心理を丁寧にすくい取り、一見きらきらとした青春映画をベースにしながら反骨精神を盛り込み、デビュー作で一躍スウェーデン映画界の旗手となりました。ちなみに、ロシアのガールズユニットt.A.T.uのコンセプトは本作に着想を得ているそうです。

実際に起きた子ども同士の恐喝事件から、移民政策の歪みを暴く『プレイ』

『プレイ』は『フレンチアルプスで起きたこと』のリューベン・オストルンド監督による2011年の作品で、同監督の『The Square』は『第70回カンヌ国際映画祭』で最高賞のパルムドールを受賞しています。スウェーデンの第二の都市であるヨーテボリのショッピングモールで、白人の少年たちに因縁をつけ、携帯電話を取り上げてしまう移民の少年たち。彼らにとってそれはゲームの始まりに過ぎず、やがて被害者の少年たちを巧妙な手口で心理的に追い詰めていきます。

ビレ・アウグスト(デンマークの映画監督)の『ペレ』やヤン・トロエル(スウェーデン・マルメ出身の映画監督)の『移民たち』でも描かれているように、新天地を求める貧しい農民たちを国外へ送り出し続けた歴史を経て、スウェーデンは移民政策でも先進国になりました。ところが、近年、その政策の歪みを指摘するニュースを目にすることが多くなっています。

『プレイ』では、そういった社会によって二分化してしまった街の子どもたちの様子が描かれ、具体的な描写はなくとも、着ているものや持ち物から貧富の差がうかがえます。また、被害者の少年たちは大人に助けを求めますが、加害者の少年たちに大人の気配は感じられず、彼らにとって大人たちは頼るべき存在ではないであろうことが語られています。

実際に起きた恐喝事件を元に描かれているのですが、ワンシーン、ワンカットの映像がもたらす臨場感がその場に居合わされているような気分にさせられ、一方的に見ることしかできない観客は、劇中に出てくる無関心な大人たちと同じスタンスに立たされている状況になります。大人として、自分ならどういう態度を取るのか。そして、この事件が起きた背景についてどう考えるのか。子どもたちの間で起きた一つの事件を通して、とても大きな課題が突き付けられます。オストルンド監督、恐るべし。

今回はスウェーデンのユースカルチャーに触れることができる映画をご紹介しました。その土地の言語や風景から旅気分を楽しめるほか、社会的背景やライフスタイルを知ることができるのも映画の魅力の一つ。次回以降も、北欧各国の文化が感じられる映画を紹介していきます。

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リリース情報

『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』
『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』(DVD)

2008年11月28日(金)発売
価格:5,076円(税込)
(株)ハピネット

プロフィール

トーキョーノーザンライツフェスティバル

2011年から毎年2月に開催しており、新旧の北欧映画の選りすぐりの傑作をこれまでに約100作品上映。音楽やアート、食などでも北欧の文化を発信している。

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