北欧映画祭『TNLF』がオススメ。北欧の国別注目映画5選

日本の配給会社も注目する、ハリウッド映画にはない北欧映画の魅力

「北欧映画」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか? シリアスで、人間の内面に迫るドラマに秀作が多いので、「暗い」とか「重い」と言われてしまうこともありますが、恋愛モノやコメディーもあり多様性に富んでいます。そして、一言で「北欧」と言っても、国によって特徴が異なります。

ここ数年は、日本でも北欧映画の公開作品数も増えて、映画館で観るチャンスも増えてきています。『さよなら、人類』のロイ・アンダーソン監督はスウェーデン出身、『ル・アーヴルの靴みがき』のアキ・カウリスマキ監督もフィンランド出身、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のラース・フォン・トリアー監督もデンマーク出身と、知らぬうちに北欧映画に触れていた人も多いかもしれません。

そんな北欧映画の魅力を紹介し、2011年からこれまでに100本ほどの作品を上映してきた『トーキョーノーザンライツフェスティバル』(以下、『TNLF』)が、おすすめの北欧映画を連載形式で紹介していきます。

今回は、近年話題になった作品を中心に「今、おさえておくべき北欧映画」を国別でピックアップ。スウェーデン、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、デンマークの5か国から注目の作品を1本ずつご紹介します。

40か国で翻訳されたベストセラーを映画化。スウェーデンの『100歳の華麗なる冒険』

『100歳の華麗なる冒険』 ©2013 / Nice FLX Pictures all rights reserved.
『100歳の華麗なる冒険』 ©2013 / Nice FLX Pictures all rights reserved.(オフィシャルサイトを見る

まずは、スウェーデンから。40か国で翻訳され、800万部を超える大ベストセラーを映画化し、スウェーデン本国のみならず、ヨーロッパでも大ヒットした『100歳の華麗なる冒険』をご紹介します。

100歳の誕生日に老人ホームから逃げ出したアラン。その冒険を追うにつれて、彼の奇想天外な過去が明らかになってきます。幼少期からの爆弾好きが高じて、スペインの独裁者フランコ将軍やソ連のスターリンと対面したり、冷戦時代にはロシアとアメリカの二重スパイになって、世界中の要人たちと交流。激動の20世紀における重要な場面に立ち合いながらも、本人には主義主張はなくすべて成り行き任せ……。

世界中の誰もが知っている歴史が、そのまま彼の歴史になっているというユニークなストーリーが世界中でヒットした理由のひとつだと思いますが(参考:『100歳の華麗なる冒険』を世界で大ヒットさせた「笑い」の力)、彼の生き方そのものが人生賛歌になっているという部分も大きな共感を呼んだのではないでしょうか。

20代から100歳までのアランを、スウェーデンのコメディアンのロバート・グフタフソンがすべてひとりで演じていますが、そのメイクを手掛けたラヴ・ラーソンとエヴァ・フォン・バールは、本作と『幸せなひとりぼっち』で『アカデミー賞』のメイクアップ賞に2年連続でノミネートされました。

社会の片隅で生きる体重200kg童貞のラブストーリー。アイスランドの『好きにならずにいられない』

『好きにならずにいられない』 © Rasmus Videbæk
『好きにならずにいられない』 © Rasmus Videbæk(オフィシャルサイトを見る

次は、『TNLF2016』でのジャパンプレミア上映が大盛況だった『好きにならずにいられない』。社会にうまく馴染めず不器用に生きる人々を、アイロニーを交えながらも優しく見つめ続けているアイスランドの俊英、ダーグル・カウリ監督は、『TNLF2013』での監督特集でも好評を博しました。

主人公は、43歳で童貞、ジオラマ作りが趣味で、空港勤務なのに飛行機には乗ったことがないという大男のフーシ。社会の片隅でひっそりと生きていましたが、シェヴンという女性との出会いから人生を変えていく姿が描かれています。フーシを演じるのは、アイスランドで20年にわたり俳優として活動しているグンナル・ヨンソン。カウリ監督は、テレビのコメディー番組を見て彼に惚れ込み、この脚本を書いたとのこと。

フランシス・フォード・コッポラ監督(『ゴッド・ファーザー』)も、「フーシ、君のような人が増えたなら、世界はもっと幸せになれるのに」と賛辞を贈ったというフーシの愛すべきキャラクターは、世界中にファンを生み話題になりました。不器用で優しく、シャイな非モテ男のラブストーリーという点でも、日本人が共感できる部分が多そうです。

アイスランドは人口約33万人程度(2016年9月時点)の小さな国で、映画の製作本数も年に10本程度と少ないですが、1作品ごとのクオリティーの高さにはいつも驚かされます。カウリ監督の今後はもちろん、新しい才能との出会いにも期待しています。

マリメッコ創業者の半生から、国の近代史が見えてくる。フィンランドの『ファブリックの女王』

『ファブリックの女王』 ©Bufo Ltd 2015
『ファブリックの女王』 ©Bufo Ltd 2015(オフィシャルサイトを見る

日本でも人気のフィンランド生まれの世界的ブランド「マリメッコ」の創業者であるアルミ・ラティア(1912年~1979年)の半生を描いた『ファブリックの女王』。巨匠イングマール・ベルイマンの作品『ファニーとアレクサンデル』でプロデューサーを務め、フィンランド人で唯一オスカーを受賞しているヨールン・ドンネルが監督の作品です。

マリメッコの初期の役員でもあり、アルミにとって近い存在だったドンネル監督が、才能にあふれ、成功した者の孤独や葛藤を劇中劇(映画作品内で劇が演じられる手法)で浮き彫りにしていきます。もちろん、華やかでありながらもシンプルなマリメッコのデザインの数々も登場します。

フィンランドは世界で3番目に女性が参政権を獲得し、世界で初めて女性の被選挙権を認めた国です。敗戦国であったフィンランドが復興を遂げた要因として、女性が男性と共に社会で活躍したことが大きく、アルミが生きた時代からそういったフィンランドの近代史も見えてきます。

IKEAの創業者を誘拐!? ノルウェーの『ハロルドが笑う その日まで』

『ハロルドが笑う その日まで』 ©2014 MER FILM AS ALL rights reserved
『ハロルドが笑う その日まで』 ©2014 MER FILM AS ALL rights reserved

『ハロルドが笑う その日まで』はノルウェーの作品ですが、スウェーデンの大企業IKEAが物語の重要な役割を果たしています。ノルウェーの港町ベルゲンで長年営んでいた小さな家具店の隣にIKEAの北欧最大店舗ができたことにより自分の店の閉店を余儀なくされ、さらに妻も亡くしたハロルドが、IKEAの創業者カンプラードを誘拐してしまうというストーリーなのです。

主人公のハロルドと、誘拐計画の途中で出会った16歳の少女エバと、偶然誘拐できてしまった創業者のカンプラードの三人の奇妙な交流がユーモアたっぷりに描かれています。北欧の中でも、同じスカンディナビアに属するノルウェー語とスウェーデン語は、ライティングは異なれどスピーキングは非常に似ていて、意志の疎通は問題なくできるそう。ノルウェー語を話すハロルドと、スウェーデン語を話すエバとカンプラードの会話が成立しているところにもご注目ください。

社会問題と善悪の揺らぎを描く、デンマークの『真夜中のゆりかご』

『真夜中のゆりかご』 © 2014 Zentropa Entertainments34 ApS & Zentropa International Sweden AB
『真夜中のゆりかご』 © 2014 Zentropa Entertainments34 ApS & Zentropa International Sweden AB

妻子と幸せな生活を送っていたはずの刑事が、まだ赤ん坊だった我が子の突然死により、善と悪の境界線が揺らいでいく様をサスペンスタッチで描いた『真夜中のゆりかご』。デンマークは教育費や医療費が無料で、出産にも費用がかからないという社会福祉制度を揃え、2016年の「世界幸福度ランキング」でも1位を誇っています。そのようなイメージの裏側で、薬物、育児放棄や育児ストレス、ドメスティックバイオレンスといった社会問題が蔓延しているという事実に切り込み、善と悪、そして正義とは何か? という問いを突きつける作品です。

監督のスサンネ・ビアは、現在のデンマーク映画界において、ラース・フォン・トリアー(『ダンサー・イン・ザ・ダーク』)、ビレ・アウグスト(『マンデラの名もなき看守』)に次いで、日本で公開作の多い監督です。脚本家は『未来を生きる君たちへ』などスサンネ・ビア作品の多くでタッグを組んでいるアナス・トマス・イェンセン。人間の心理の奥深い部分を炙り出すことで、見る者は登場人物の感情に寄り添ってしまう。それは時に苦悩をもたらしますが、それが映画の力であり、魅力であると思います。

バラエティーに富んだ5作品を紹介しましたが、国ごとに歴史的背景や国民性はさまざまだということを感じていただけたのではないかと思います。次回以降も、それぞれの国の文化を感じられるような映画を紹介していきます。

リリース情報
『100歳の華麗なる冒険』(DVD)

2015年4月24日(金)発売
価格:1,944円(税込)
販売元:株式会社KADOKAWA

『好きにならずにいられない』(DVD)

2017年1月5日(木)発売
価格:4,104円(税込)
販売元:オデッサ・エンタテイメント

『ファブリックの女王』(DVD)

2016年12月16日(金)発売
価格:4,298円(税込)
販売元:ビクターエンタテインメント

『ハロルドが笑う その日まで』(DVD)

2016年11月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)
販売元:TCエンタテインメント

『真夜中のゆりかご』(DVD)

2015年12月4日(金)発売
価格:5,076円(税込)
販売元:株式会社KADOKAWA

プロフィール
トーキョーノーザンライツフェスティバル

2011年から毎年2月に開催しており、新旧の北欧映画の選りすぐりの傑作をこれまでに約100作品上映。音楽やアート、食などでも北欧の文化を発信している。



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「幸福度が高い」と言われる北欧の国々。その文化の土台にあるのが「クラフトマンシップ」と「最先端」です。

湖や森に囲まれた、豊かな自然と共生する考え方。長い冬を楽しく過ごすための、手仕事の工夫。

かと思えば、ITをはじめとした最先端の技術開発や福祉の充実をめざした、先進的な発想。

カルチャーマガジン「Fika(フィーカ)」は、北欧からこれからの幸せな社会のヒントを見つけていきます。

スウェーデンの人々が大切にしてい「Fika」というコーヒーブレイクの時間のようにリラックスしながら、さまざまなアイデアが生まれる場所をめざします。

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