ペトロールズ長岡亮介が自転車に乗る理由。日常生活が冒険に変わる

ペトロールズ長岡亮介が自転車に乗る理由。日常生活が冒険に変わる

インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:寺内暁 リードテキスト・編集:今井大介(CINRA.NET編集部)

建築で学んだ引き算の美学。ペトロールズの音楽にも通じる、長岡流のクリエイティブとは?

―最近はどれくらのペースで自転車に乗っていますか?

長岡:最近は週2くらいのペースで、近所に買い物に行くときとかに乗っているかな。リハーサルの現場にも事前に楽器を預けているときは自転車で行ったりします。スタジオの中に自転車を入れて、それを見ながら演奏するのも気持ちがいいんですよ(笑)。あと、ずいぶん前の話しになるけど、機材車に自転車を積んでツアーを回ったこともあります。自転車で地方の街を散策してね。自転車は一人の世界に入り込んで、知らない路地に入ったり気軽に冒険できたりするのがいいですよね。あとは基本的に何も有害物質を排出しないし、環境にもいいじゃないですか。

―自転車に乗りながら楽曲のアイデアが浮かぶようなこともありますか?

長岡:たまにありますね。曲の一部とか、ディテールとか。「あそこはどうしようかな?」と考えあぐねていたところが「あ、こうすればいいんだ!」って思いついたり。メロディが浮かぶこともあるけど、乗っていて気持ちがいいからだいたい忘れちゃいますね(笑)。

―やはり車に乗っているときとは異なる感覚があるのでしょうか?

長岡:車は密室空間ですから。車に乗っているときは周りの空気が一緒に移動しているような感覚があるけど、自転車はそれとは違ってすべてが置き去りになるんですよね。だから、集中して物事を考えるなら車のほうがよくて、瞬間的なひらめきが浮かぶのは自転車のほうが多いかもしれない。

長岡亮介

―長岡さんが愛用するものとして、自転車、車、眼鏡、そしてギターがあると思いますが、それらに通底しているものを導き出すことはできますか?

長岡:そうだなぁ。やっぱり個性のあるものが好きだし、人と同じものがイヤだという感覚が大前提にあって。これはよく言うんですけど、そのものを設計したり作ったりしている人のエゴが出ているものが好きなんです。

―作り手の主義主張がはっきりと刻まれているものということでしょうか?

長岡:そう。今日乗ってきたMoultonも、小さい車輪だと前に進むのが遅かったり、乗り心地が悪くなったりすることもあるけど、小さい車輪特有のよさがあり、そのうえでデメリットを補うような造りになっていて。そうやって確固たる理想があって設計されているものが好きです。「普通だったらこんなにめんどうくさい設計しないでしょ」って思われるかもしれないところを、「いや、これがいいんだ」と押し切って作られたと感じるものに惹かれます。

―それは過剰な装飾が排され、粋で洗練された引き算が施されたものの魅力と言えるのかもしれないですね。その結果、何にも似てないものになっているみたいな。

長岡:そうですね。設計の思想みたいなものがカタチになって、結果的にカッコよくなっているものが好きです。それで何にも似てなければすごくいいですよね。

長岡亮介

―スリーピースの音だけで成立させるペトロールズの音楽像しかり、長岡さんのクリエイティブにおける美学にも通じるポイントでもあると思いました。

長岡:そう、ペトロールズの音楽とも一緒だと思います。だからすべてにおいて何かでデコレーションされてなくてもシンプルでカッコいいと思えるものが好きなんですよね。

―自身で好きなもののデザインを手がけたいとは思わないですか?

長岡:それはあまりないかな。これも音楽の創作に通じる話かもしれないけど、ギターでも自転車でも自分が好きなのは「あ、その手があったか」って思わせてくれるもので。それを改造しないで乗ったり弾いたりするのがいい。そうは言いつつもちょっと改造もしちゃう時もあるんだけど、そのものがもともと持っている素の状態のよさは壊したくなくて。

―長岡さんが惹かれる造形美や物を所有する価値観において、大学で建築を学んでいたバックボーンが影響している部分もありますか?

長岡:それもあると思います。でも、途中から建築は環境を破壊する一端にもなっていると思ってから興味がなくなってきまして。それだったら古い物を大事に使ったほうがいいんじゃないか、と。物持ちがいいのもそういう考えがどこかでもとになっているかもしれない。

長岡亮介
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プロフィール

長岡亮介(ながおか りょうすけ)

神出鬼没の音楽家。ギタリストとしての活動の他に楽曲提供、プロデュースなど活動は多岐にわたる。「ペトロールズ」の歌とギター担当。黒沢清監督「スパイの妻」映画音楽を担当。「浮雲」名義で東京事変のギタリストも務める。

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