AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

AAAMYYYが『ぼくのエリ』を考察。社会的価値観に踊らされるな

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AAAMYYY
編集:石澤萌(CINRA.NET編集部)

「子どもが見るものではない」と決めつけてしまう、大人たちのエゴ

映画や音楽はアートであり、それぞれの表現者の過去の体験や日常に感じる違和感、心を揺さぶられるものなどを独自の方法で表現したものだ。そこには社会へのアンチテーゼ、暴力的風刺、生死感や価値観などが反映されるだろう。コンプライアンスに囚われずにいるのは、恐らく近代のウォルト・ディズニーアニメーションくらいしか思いつかない。

『ぼくのエリ』で、オスカーがいじめっ子に頭を押さえつけられ、プールに溺れさせられるシーンがある。ここで吸血鬼のエリが登場し、いじめっ子を殺してオスカーを助け出し、プールには胴体のバラバラになった子供の死体が浮かぶ。私の所属するTempalayが昨年リリースした“そなちね”のミュージックビデオでは、夏休みの自由研究で少年が銃を密造し、その銃をこめかみに当て倒れるシーンがある。それが一体どういう意味なのか賛否両論を繰り広げ、特に子どものいる視聴者からは「子どもと一緒に見るものではない」という意見も飛び交った。

では、実話を基にしたひめゆりの塔は、「9.11」の映像は、子どもと見てはならないのだろうか?

表現の自由はもちろん守られるべきだと表現者自身として切に願うのだが、グローバル化し多種多様になった社会になりつつあっても、社会における「倫理観」によって規制されてしまう。何もかもさらけ出すことが、どうして難しいのだろうか。その答えは昔からひとつしかなくてずっと変わらない、「大人が作り上げたエゴ」のせいだと私は考える。

撮影:AAAMYYY
撮影:AAAMYYY

親になった人のほとんどが、自分の子どもを愛していると思う。愛しているがゆえに、幸せになってほしいと願うばかりに、歪んだ方向に子どもは育てられてはいまいか。「子どもの幸せ」とは一体何なのか。

ドラえもんのジャイアンがヘルメットを被って自転車を漕いでいるシーンを見たときは、そうした安全確保は重要だと承知しながらも、「コンプライアンスにも程がある」と笑ってしまった。とある小学校では「きちんと給食費を支払っているのに『いただきます』と言わせるなんて」という保護者の苦情により、給食を食べる前に「いただきます」を言わないらしい。どちらも子どもの教育上、悪影響を及ぼすであろう要素を排除するためのコンプライアンスと思いきや、実際は大人たちの勝手なエゴに対処するためのものであるのは、よく考えれば分かると思う。

だが、気持ちは分かる。蒟蒻畑のゼリーの容器も、お風呂の注意書きも、自転車に乗るときにヘルメットを被ることも、全部子どもや誰かを思う人が作ったルールだ。でも何だか腑に落ちない、別の問題を浮き彫りにしていると感じないだろうか。

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リリース情報

Tempalay
『21世紀より愛をこめて』(CD)

2019年6月5日(水)発売
︎価格:2,860円(税込)
PECF-3234

1. 21世紀より愛をこめて
2. のめりこめ、震えろ。
3. そなちね
4. 人造インゲン
5. どうしよう
6. 脱衣麻雀
7. Queen
8. THE END(Full ver.)
9. SONIC WAVE
10. 未知との遭遇
11. 美しい
12. おつかれ、平成

AAAMYYY
『BODY』

2019年2月6日(水)発売
価格:2,547円(税込)
PECF-3222

1. β2615
2. GAIA
3. 被験者J
4. Z(Feat.Computer Magic)
5. ポリシー
6. ISLAND(Feat.MATTON)
7. 愛のため
8. All By Myself(Feat.JIL)
9. 屍を越えてゆけ
10. EYES(Feat.CONY PLANKTON)

プロフィール

AAAMYYY
AAAMYYY(えいみー)

長野出身のシンガーソングライター / トラックメイカー。キャビンアテンダントをめざしてカナダへ留学、帰国後の22歳より音楽を制作しはじめ、2017年よりAAAMYYYとして活動を開始。2017年の『WEEKEND EP』を皮切りに、『MABOROSI EP』『ETCETRA EP』と3作品をカセットテープと配信でリリースしている。さらに、RyohuのゲストボーカルやTENDREのサポートシンセ、DAOKOへの楽曲提供やCMソングの歌唱、モデル、ラジオMCなど多方面に携わるなか、2018年6月からはTempalayに正式加入。2019年2月、ソロとしての1stアルバム『BODY』をリリースした。

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