暴力を捨てたC.O.S.A.は、ラッパーとして言葉で人を動かす

暴力を捨てたC.O.S.A.は、ラッパーとして言葉で人を動かす

インタビュー・テキスト・編集
久野剛士(CINRA.NET編集部)
撮影:西田香織
2020/01/09
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「食らう」っていうのは、そうやってなにかを考えるきっかけや、変化を生むようなことなんです。

C.O.S.A.

―ケンドリック以外で、好きなラッパーはいらっしゃいますか?

C.O.S.A.:2019年3月に亡くなってしまったニプシー・ハッスルですね。現役で一番好きなラッパーでした。その音楽性がなによりも好きでしたし、人としても憧れがありました。

まだ彼が本格的にビッグスターになる前、ちょうど東日本大震災のあとくらいですね。来日ツアーで名古屋に一度来てくれたことがあるんです。本人たちに責任はないけど、多くの海外アーティストは震災後の来日ライブをキャンセルしてたんですよ。でも、ニプシーは日本に来て、福島でのライブも希望して。それで、線香を上げて、ライブをして帰っていったそうです。

亡くなって以降、スターの立場になってもフッド(「地元」の意味)のコミュニティーに貢献していたということとかが再評価されていますけど、昔から彼の姿勢は変わってない。彼に会ったことのある人たちもナイスガイだといっていたし、なにより作品もコンスタントにリリースしていました。リスペクトするところしかありませんよ。

「This Is Nipsey Hussle」プレイリスト(Spotifyを開く

C.O.S.A.

―C.O.S.A.さんが、誰かを動かしたという感触を得た、自身の曲はありますか?

C.O.S.A.:自分のおやじが警察官であることをリリックにした“知立Babylon Child”ですね。当時のヒップホップ界では、おやじが警察官であることはタブー視される傾向があって、いえない人がたくさんいたらしいんです。

C.O.S.A. “知立Babylon Child”MV

―そのいいづらいものをリリックにしたわけですが、そのときはある程度の勇気や覚悟が必要でしたか。

C.O.S.A.:それはありました。でも、自分の話だし、そこで黙ってしまったらラッパーではないとは思うんです。もちろん、人それぞれにスタイルがあり、俺とは違うスタイルもあると思うけど、俺のヒップホップはハードな部分がとても多いから、人を気にしていいたいことをいわなくなったらダメだろうという意識が昔からあります。

あの曲をドロップしてから、全国ライブへ行くと、お客さんがこっそりと近づいて来て、「自分も親が警察官で、それをクルーのみんなにはずっといえなかったけど、あの曲をきっかけにいえるようになりました」と感謝されることが、随分ありました。その中には、男の子も女の子もいましたよ。

俺の音楽は、みんながただただ楽しくなるような種類のものではないと思います。どちらかといえば、聴いて、「うわー」と考え込むようなもので。「食らう」っていうのは、そうやってなにかを考えるきっかけや、変化を生むようなことなんです。

力士をしていた祖父の形見だというゴールドの指輪
力士をしていた祖父の形見だというゴールドの指輪

―C.O.S.A.さんのリリックは、リスナーになにかを突きつけるものがありますよね。

C.O.S.A.:このスタイルのおかげで、リスナーも本気になってくれる人が多いのはうれしいですね。本気で食らってしまって、泣きながら話しかけてくる人とか、人生が変わって救われたっていう人もいます。

―自分のスタイルのどのような部分が多くの人を本気にさせるのだと思いますか?

C.O.S.A.:俺のラップは、言葉を単に音符として扱っているわけではないので、聴き流せないんだと思うんですよ。もちろんそうしている部分や作品もありますが、BGMとして機能するような曲ではなくて。

みんなでいるときに聴く曲ではなく、1人の時間にじっくりと耳を傾ける人が多いと思います。俺自身も、そういう音楽の聴き方をしていて。人といるときには、本気で音楽を聴いたりしないし、そういう意味では俺の音楽と全くマッチしないって人もいるだろうなとは思いますね。

C.O.S.A.“Death Real”を聴く(2019年 / Spotifyを開く

―ヒップホップには、パーティーなどのときにかける側面もありますけど、そういう楽しみ方では、C.O.S.A.さんの作品の醍醐味は味わえないかもしれませんね。

C.O.S.A.:結果としてクラブでかかっている曲もありますけどね。でも、それは自分が意図したことではなくて、曲が広まったことでそうなっているというだけなので。

アメリカでは、クラブでヒットしている曲でもリリックが深く刺さるものもあります。日本語の曲もそこにかなり近づいていますが、今後もっとその傾向が強くなっていけば俺自身もうれしいですね。

C.O.S.A.
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プロフィール

C.O.S.A.(こさ)

1987年生まれ、愛知県知立市出身のヒップホップMC。キャデラックのローライダーに乗っていた6歳上の姉の影響で深くヒップホップにのめり込み、12歳の時にリリックを書き始めて、16歳からラッパーとしての活動を開始。同時にビートも手掛ける。その後、ビートメイカーとしての活動を経て、2013年よりラッパーとして再始動。精力的に楽曲制作とライブを行なう。2015年、自身初となるラップアルバム『Chiryu-Yonkers EP』を発表。2016年のKID FRESINOとのコラボレーション作『Somewhere』を経て、2017年にミニアルバム『Girl Queen』を発表。2019年にはシングル『Death Real』をリリースした。

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